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家族信託の落とし穴3 信託受益権の作り方がダメな事例

家族信託の落とし穴3 信託受益権の作り方がダメな事例

【1】信託受益権
前回は、信託を実現する受託者のお話でした。今回は受託者から利益を受け取る受益者について掘り下げていきたいと思います。

ある財産の所有権を信託すると、もともとの財産の所有者は、信託の受益権という権利を手に入れます。この信託の受益権を持っている人を受益者といって、信託された財産の実質的な所有者とされます。

元所有者   信託の受託者
A   →  B
       ↑   受益権
       A受益者

この受益権は、もともとの所有権とは、似てもにつかぬ程に、いろいろ変化してしまいます。たとえば、不動産の所有権を信託・登記して、その受益権を譲渡、または贈与した場合について、受益権は権利なので、本来不動産の取得者にかかる不動産取得税がかかりません。また、信託の登記をされると受益者の住所・氏名も合わせて登記されますが、受益権の譲渡・贈与はこの受益者の住所・氏名を変更するだけです。このときの登録税は不動産1個あたり1000円とされています。普通、不動産を売買・贈与しようとすると、その不動産の固定資産評価額の2%の登録税を納税する必要があることと比較すると大きな差があります。つまり、1000万円の不動産の売買・贈与をすると20万円の登録税がかかるはずのところ、たったの1000円で済んでしまうということです。

【2】よくあるニーズ

このように財産を信託すると受益権という「権利」となってしまうので、いろいろ変化「させる」こともできます。
たとえば、他人に貸している不動産を信託した場合、その他人から家賃を一定期間受け取る権利とその一定期間後不動産を取り戻す権利に「分割」することができます。
また、最初は受益権をAさんが取得し、その相続時にBさんが取得し、さらにその相続時にCさんが取得するという形で次々と受益権を「後継ぎ」させることもできます。
このように、財産を権利にしてしまう信託は、いろいろな可能性があるといわれています。

【3】危険な受益権の内容とは

もっとも良いことばかりではありません。自由に変化「させる」ことができるということは、抜け道も多いということです。抜け道を嫌うのは税務署です。彼らが注目するのも「受益権の内容」がほとんどであるとされています。
たとえば、先ほどの受益権を分割するようなケースでは、信託の設定次第では過度な節税となりうることが指摘されています。
また、受益者を連続させて後継ぎを何代にもわたり指定するケースでは、過酷な税金が課される可能性が高く、このような受益権にしてしまったばかりに、後継ぎが想定していない苦しい経済状態に陥ってしまうこともあるのです。

受益権の内容をはじめとして信託は、しっかり家族と専門家が話し合ってつくり上げていくことが大変重要です。
信託をつくり上げるということは、財産を持つ人、財産を預かる人、その財産を将来、受け取る人、法律の専門家、税の専門家がしっかり話し合うことがスタートになります。

荻野恭弘【司法書士法人名南経営】

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