信託借入は遺留分計算上の「債務」か
事例です。
Aさん(75歳)には実子が2名XYいますが疎遠です。
そこで仲の良い姪っ子のB子さんに不動産(1億円の土地)の自益信託しました。
Bが帰属権利者です。
Bさんは、信託事務として1億6000万円の借入をして、建物を建てました。
その固定資産評価7000万円。
Aさんに相続が開始したところ、XYがB子さんに対して遺留分侵害額請求をしてきました。
その主張は1億7000万円の2分の1=7500万円の侵害額だとのこと
信託借入債務は被相続人に帰属していないので、という理由です。
(遺留分を算定するための財産の価額)
第千四十三条 遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とする。
もちろん信託法上の受益権は信託財産であるプラス財産から信託財産責任負担債務というマイナス財産を引いたものが内容になります。
信託終了時にはこの清算をして残余財産を帰属権利者に渡すことになります。
帰属権利者が受け取るものは残余財産なので上記の1043条で算定される財産の価格と近似するのだろうと思います。
理論的に詰めていくのもの大事ですが、まずは、しっかり遺留分対策もしようと思えば、具体的には、委託者兼当初受益者を連帯債務者として関与してもらうことが確実なのかなと思いました。
帰属権利者となることの多い=遺留分の侵害者となる=受託者の意思で行った借入で遺留分額がぐんとへるのもなんとなーく違和感ないといえませんので。